矩計図の書き方 平屋編

矩計図の書き方について説明をします。

 

矩計の書き方 01図 を見ながら説明をします。

 

矩計図の書き方 01

001-75 矩計図の書き方 01

 

この図の 矩計図1 を見てください。

 

良く、木造住宅の矩計図の書き方の解説書にあるような図面です。

 

ここでは矩計図の書き方となっていますが、考え方から解説していきます。
市販の解説書は、きれいに書く方法や、書き方の順番などを書いているだけの本が多いです。
考え方を理解しないと、矩計はいつまでもブラックボックスになってしまいます。
また図面中の寸法ですが、床高や階高が主な寸法になっており、これらの寸法に至る解説がありません。
解説書などの著者がそこまで解説していないのは、読者は理解をしているのが当たり前と思っているのでしょう。

 

話を元に戻して、解説を続けます。

 

矩計図1の中の寸法は、大きな寸法しか書いてありません。
この寸法は、いきなり決められたわけではなく、いくつかの部材の施工の仕方を決めてから、最終的に決まった寸法です。

 

建設用CADの矩計図などでも、細かな設定をして、最終的に階高などが図中に出てきているのです。

 

では寸法を決める施工方法を解説しながら寸法の値を説明していきます。

 

矩計図1の中に、床高・階高・最高軒高の寸法が入っていますが、これらの寸法が決まるには、左の矩計図2のそれぞれの寸法が隠れていると思ってください。

 

矩計図の各寸法は、基礎から上に向かって考えていくのが自然です。施工の順番通りで考えていきましょう。

 

01 GL
 建物が建つ敷地から、排水経路の勾配を考慮したり敷地内の環境から決定します。建築中に動かない固定物をBM(ベンチマーク)としてそこからの寸法として決めます。道路斜線や北側斜線など建物に影響する斜線などの起点にもなりますので慎重に決める必要があります。

 

02 基礎高 
GLから基礎天端までの寸法です。まず基礎断面の形状を決定し、基礎天端からの下がり寸法からGLを決定します。一般的には建物内部の床下地盤面より下げて設定するのが一般的です。内部の排水や湿気などを考慮しています。(図中のGLからベタ基礎天端の寸法がこれにあたる)

 

03  布基礎高
最近はベタ基礎工法が多いようです。ベタ基礎の天端から布基礎の天端までの寸法です。基礎型枠の寸法や柱用アンカーボルトの長さなどから決めていきます。また将来の床下内での作業(再防蟻工事や配管補修工事など)を考えて高めに取りたい寸法です。

 

04 基礎パッキン
最近の工法では、布基礎に通風孔を設けず基礎パッキンを基礎に施工し基礎パッキンから通風を取る施工方法が一般的のようです。基礎パッキンの厚みにより決まる寸法です。

 

05 土台
土台は、通常柱の寸法と同じになります。地梁として考慮するような特殊な場合を除いて、全て同じ寸法の土台材を使用します。

 

06 1階横架材間寸法 (矩計の基本寸法です)
横架材間寸法とは、字のごとく横架材である土台天端から梁材下端までの寸法です。土台はどこでも寸法が変わりませんが、梁材の成は小さいものから大きなものまであります。その中で一番小さい梁材の下端までの寸法が最大になります。

 

横架材寸法は、柱材から、土台と梁材に入るホゾ長さ分を引いた寸法になります。
柱材を最大に生かす寸法は、

 

 横架材寸法 = 土台天端から梁下端までの寸法
       = 柱材寸法 - 土台側ホゾ長さ - 梁側ホゾ長さ

 

になります。

 

梁材の成が一番小さい柱が、最大横架材寸法となり、つまりは一番長い柱材になります。

 

最近は、2階床材に極厚合板を貼り上げる使用が多いため、梁材が一定の大きさ以上の成を使用している場合が多いようです。
(3尺間隔で梁を架けて、直接極厚合板を貼るため)
この場合注意したいのは、通し柱の寸法と外壁仕上げ材の寸法です。
1階の天井高も2階の天井高も高く取りたい場合、注意しないと通し柱が6M材で足りなくなる場合があります。
(7M材もありますが、当然単価は高くなる)
また、外壁材も縦張りで3×10版(さんとうばん)で貼り上げて寸法が足りなくなるなどの場合があります。
注意しましょう。

 

柱材からの最長での寸法が分かれば、あとはいろいろな条件を検討したうえで決めていきます。

 

07 2階床梁最小寸法
2階の床梁の中で最小の成の寸法になります。一般的な在来工法では柱材と同寸です。

 

08 2階横架材間寸法
考え方は1階と同じです。

 

09 2階小屋梁最小寸法
2階の小屋梁の中で最小の成の寸法になります。一般的な在来工法では柱材と同寸です。

 

10 1階床下寸法
ベタ基礎の天端から1階床仕上げまでの寸法です。
床下収納庫、コタツなどを設置する場合、それらが納まる寸法が必要です。
また、布基礎部分で記述したように、将来の床下での作業性も考慮しましょう。

 

11 1階床造作寸法
2階造作寸法を含め、管理人が作った言葉です。
土台の天端から床仕上げ材までの寸法です。
ここでは階高の基準になる寸法ですので、1階廊下の仕上げ寸法になります。

 

12 天井高
1階・2階ともに、矩計図の断面部分の居室の天井高になります。

 

13 天井裏寸法
天井仕上げの下端から梁下までの寸法です。
天井裏には、ダウンライト、天井換気扇、ユニットバスの浴室換気扇、天井用エアコン、キッチンの換気扇ダクトが施工されます。
また給排水関係では、2階トイレの排水配管、2階の給排水配管などがあります。
2階床梁伏図にこれらの位置を書いて検討することが大事です。
特に2階トイレの排水配管や天井エアコンのダクトなどは、外へ出すまでやパイプスペースに配管するまでの途中に大梁があって天井高に影響する場合があります。
また、トイレ排水はなるべく居室の上を通らないように、プランニング時から気を付けましょう。

 

14 2階床梁最大寸法
上記で記述したように、配管やダクト廻りに大梁があるか注意してください。

 

15 2階床造作寸法
1階と同じく、2階床梁から2階床仕上げ材までの寸法です。

 

16 2階小屋梁最大寸法
2階天井に、1階と同じ設備があれば配置を考えなければなりません。
和風住宅ですと、少し高さを抑える傾向にあるため、天井高の位置と梁下の寸法によっては、天井換気扇のダクトが施工できない場合が出てきます。

 

各部分の寸法の説明をしました。

 

次に階高の寸法を説明します。

 

階高の寸法は、土台・梁からの床仕上げ寸法を求めれば簡単です。

 

 階高寸法 = 最大横架材間寸法 - 1階床造作寸法 + 2階床梁最小寸法 + 2階床造作寸法

 

階高寸法から、階段の段数・踏面・蹴上を決定していきます。
天井を高くして階高が高くなると、階段スペースの必要寸法を大きくしないと収まらない場合があります。
注意しましょう。

 

 

 

各寸法の解説をしましたので、具体的に矩計の寸法を決める順序を解説します。

 

なお、寸法の決定までは各条件を検討し、図面をスケッチして条件をクリアしなければ、また寸法を調整するというように、条件全てを満足するまで繰り返します。

 

01 GLの設定
   敷地内部のGLを設定
   排水勾配、隣地との取り合い、接続道路と高さの取り合い設定

 

02 基礎断面の設定
   基礎の形状・断面・寸法の設定
   構造材の設定時にすでに決定済みと思われる。

 

03 各構造材の仕様設定
   土台、梁、柱の各寸法
   構造材の設定時にすでに決定済みと思われる。

 

04 1階及び2階の横架材間の寸法設定
   柱材長、ホゾ長さを設定し、横架材間寸法を設定

 

05 1階床廻り、床造作寸法の設定
   基礎パッキンの使用、根太の高さ、仕上げ材の高さの設定
   1階床に設置する設備類(床下収納庫、コタツ類)の納まり寸法の確認

 

06 1階各室の天井高の設定
   各室の仕上げ材の確認
   天井に設置される各設備類(ダウンライト、天井換気扇、ダクト類)と2階の水回り設備類の配管位置の確認

 

07 2階床梁伏図の確認
   6で確認した設備類の納まりと位置の確認
   特に2階トイレ配管の勾配の確認、大梁との取り合い確認
   和室の天井材の施工方法の確認(目透天井、竿縁天井など天井裏から施工が必要な天井類)

 

08 1階横架材間の寸法確認
   5~7までの寸法を確認して1階の横架材間寸法で間に合うかの確認
   間に合う → 余分な寸法があれば横架材間の寸法を切り詰める
   間に合わない(足りない)1 → 天井に納まる設備の位置変更または機種変更
   間に合わない(足りない)2→ 1階床造作寸法の変更
   間に合わない(足りない)3 → 天井高を低くする・天井仕上げの変更
   間に合わない(足りない)4 → 最小梁の成を大きくする
   間に合わない(足りない)5 → 柱長さを3Mから4M材へ変更

 

09 2階の床廻り、床造作寸法の設定
   根太の高さ、仕上げ材の高さの設定
   2階床に設置する設備類(床下収納庫、コタツ類)の納まり寸法の確認

 

10 階段位置の確認
   階段の位置、階段スペースを伏図から確認

 

11 階高の算出
   1階横架材間寸法、1階床造作寸法、2階床造作寸法より階高を算出
   階高より、階段の踏面、蹴上、段数の確認
   階段位置により階段上の天井を考慮しなければならない場合があるため断面スケッチを書いて確認
   (階段廻りの梁断面も記入して確認)

 

12 2階各室の天井高の設定
   各室の仕上げ材の確認
   天井に設置される各設備類(ダウンライト、天井換気扇、ダクト類)

 

13 2階小屋梁伏図の確認
   12で確認した設備類の納まりと位置の確認
   和室の天井材の施工方法の確認(目透天井、竿縁天井など天井裏から施工が必要な天井類)

 

14 2階横架材間の寸法確認
   12~13までの寸法を確認して2階の横架材間寸法で間に合うかの確認
   間に合う → 余分な寸法があれば横架材間の寸法を切り詰める
   間に合わない(足りない)1 → 天井に納まる設備の位置変更または機種変更
   間に合わない(足りない)2→ 2階床造作寸法の変更
   間に合わない(足りない)3 → 天井高を低くする・天井仕上げの変更
   間に合わない(足りない)4 → 最小梁の成を大きくする

 

15 通し柱の寸法確認
   1階横架材間、2階床梁最小寸法、2階横架材間、ホゾ長さから通し柱の材長を確認
   6M材で間に合う → 6M材の使用で決定
   6M材で間に合わない → 通し柱の上にくる梁成を大きくする
   6M材で間に合わない → 7M材を使用する

 

16 外装材の確認
   矩計スケッチを書いて確認
   外装材の規格寸法で間に合うかの確認
   軒裏、土台足回りの仕様確認

 

17 各斜線制限、採光斜線、換気・排煙などの法規チェック
   軒の出の寸法確認
   配置寸法の確認
   ここを確認してクリアしないと、最悪の場合はプランの変更になる

 

18 立面図スケッチより高さのバランスや各屋根、窓、バルコニーの納まり確認
   窓、出窓の納まりを確認 1階屋根と窓の位置
   バルコニーの納まり 見切り壁の位置や高さ
   1階屋根の納まり 1階の間口が大きいと2階屋根の軒先と干渉する場合がある

 

19 矩計図の清書、各設定寸法の決定
   すべての条件をクリアしたら清書をする
   立面図の清書 ここで初めて正式な立面図が書ける

 

 

 

通し柱と各解の管柱は次のようになります。

 

 通し柱の寸法 = 土台側のホゾ長さ + 1階最大横架材寸法 + 2階床梁最小寸法 + 2階最大横架材寸法 + 2階小屋梁最小寸法 + 小屋梁側のホゾ長さ

 

各階の柱の長さは、横架材寸法のところで説明しましたが、1つ追加説明があります。
それは、ホゾの長さです。
2階床梁と2階小屋梁側のホゾの長さですが、その上に柱又は小屋束があり、なおかつ最小の梁成の場合は、短ホゾの長さになります。
 最小2階床梁の成  ≧ 1階管柱のホゾ長さ+2階管柱のホゾ長さ
 最小2階小屋梁の成 ≧ 2階管柱のホゾ長さ+小屋束のホゾ長さ

 

平屋の場合は

 

 最小小屋梁の成 ≧ 管柱のホゾ長さ+小屋束のホゾ長さ

 

この図が 矩計図の書き方 2図 になります。

 

矩計図の書き方 02

001-76 矩計図の書き方 02

 

柱材長さ 1図 は柱材長を1階・2階ともに3M材を使用した場合の考え方です。

 

 柱材3M(1階) ≧ 土台側ホゾ長さ+1階横架材間寸法+梁側ホゾ長さ
 柱材3M(2階) ≧ 2階床梁側ホゾ長さ+2階横架材間寸法+小屋梁側ホゾ長さ

 

プレカット工場の仕様で、柱の小口を少し切りそろえる場合があります。依頼するプレカット工場と打ち合わせが必要です。

 

柱材長さ 2図 は柱材の長さは変えずに梁成を大きくして1階の天井高さを高くした場合の図です。
この場合は、通し柱の長さに注意してください。6M材で間に合わなくなる場合が生じます。

 

柱材長さ 3図 は1階の天井高も2階の天井高も高くした場合です。
この場合は通し柱を7M材を使用しないと長さが足りない場合があります。

 

 

 

矩計で難しい場合は、建物の条件よりは斜線などの環境からくる条件のほうが厳しい場合があります。

 

矩計図は、理詰めで考えていけばいいので、理解してしまえばそれほど難しい事ではありません。
梁伏図を考えるよりは簡単です。

 

 

以上で矩計図の書き方の解説は終わりになります。